甘い生活

ビューティフル・ヒューマン・ライフ

スミスを聴いてるズーイーデシャネル

先週の月曜日、俺は重い腰をあげて中目黒へ向かった。
Tinderで知り合った女の子だった。顔写真がsoタイプだったのでスーパーライクをし、やり取りを続けていた。

会う打診をしたところひとまずOKもらったものの日程調整に返信来ず、日を改めてダメ元でもう一度聞いたら明日の夜なら空いてるとのこと。当日も直前まで連絡が来ず、これだから美人は…と思っていたが、とはいえ向かった。

目黒川沿いのテラス席に座っていた彼女は、写真よりも美人だった。それに、タイトなTシャツがはちきれそうな胸のボリューム感。
俺が今までマッチングアプリで出会った中で1番美人と言っても過言ではなかった。

20代後半までなら怖気付き、嫌われないための会話しかできなかっただろう。しかし、繰り返してきた失敗の数だけ強くなっている俺が、そこにはいた。

臆することなく話した。ともすれば渋谷のクラブにいそうな強め顔面美人の彼女だ、音楽が好き、という話は聞いていたがきっとカテゴリーが違うんだろうと思っていたら、意外にもフィッシュマンズceroなども好きで聴くという。

話をすればするほど共通点が見つかっていった。兄弟構成や兄弟の年齢差が一緒だったり、父親の実家が俺と同じ秋田で、昔はよく行っていたんだというような。
一つ一つは些細なことでも、親近感が湧くには十分だった。

昔だったら恥ずかしくて言えなかったことも今なら堂々と言えた。今まで出会った女性の中で1番綺麗です、とか、話しててすっごく楽しいから次も会いたいと思ってます、とか、話してて心地いい、とか。相手を褒めることはそもそも、恥ずかしいことでも何でもない。

元彼の話を聞いた。話を聞くに俺とはジャンルの異なる男だった。刺激があり、少し危険な匂いのするタイプ。
俺は今のありのままの自分をアピールした。アピールさせてください、俺はきっとドキドキとかときめきを与えるタイプではないけれど、一緒にいてリラックスするとか、帰ってきて顔を見たらホッとするとか、そういう安心感を与えられる存在になりますと。
好きになったらもうその人しか見ないから、浮気は絶対にしませんと。

お店を出て、コンビニで買った缶チューハイを片手に目黒川沿いをしばらく散歩してその日は別れた。そこから、LINEでどんどんアピールしていった。

なんか、敬語で褒められちゃうと営業マンのセールストークみたいですね、と言われたので、じゃあタメ口で話すね、でも俺は嘘なんて付けないし、今まで言ったことは全部俺の心からの言葉だよ!と言った。
連絡を続けていたら、急に仕事帰りの彼女から電話がかかってきた。特に用事は無かったが、とりとめの無い会話を続けていたら3時間経っていた。
好きな漫画の話になったとき、俺が生涯ベスト3に挙げているA子さんの恋人の話を彼女からしてくれて、ずっと好きで今も持っているという話を聞いて嬉しくなった。1番好きな曲を聞いたら、フジファブリックの茜色の夕日という俺の心のメモリアルソングを挙げてくれて、更に嬉しい気持ちになった。

電話でも何度も綺麗だの可愛いだの、見た目とすごく中身のギャップがあって魅力的だの、話してて楽しいだの、もう湧いてきたポジティブな感情を全て伝えた。彼女はストレートに褒められるのは好きだし嬉しい、と言ってくれた。

今も毎日LINEを続け、たまに通話もしている。
来週下北沢で会うが、もう俺はそこで気持ちを伝えるつもりだ。3回目のデートだとか執着分散理論だなんだとか、関係ねえんだ。
忘れてたんだ、目の前の女の子に対してだけ、脇目も振らずにストレートにガンガンぶつかる。これしか俺にはできねえんだって。