考え得る限り最悪の状態にいる。
ここ数年で間違いなく今が一番酷い。
仕事は上手くいかない。
逆玉の輿に失敗した。
喘息になった。事故の加害者になった。
牡蠣に当たって感染性胃腸炎になり、
クレジットカードが止まった。
去年の4月から編集を始めて、1年と4か月。
1年目は絶好調だった。単純に編集の仕事が新鮮だった。
スカウトも割と上手くいった。
新チームの仲もかなり良く、先輩のバックアップのもと、
担当新作も滑り出し良好だった。
今年に入り、少し雲行きが怪しくなってきた。
プロットやネームチェックの能力が伸びている気がしない。
先輩に言われた。「キャラに自分を投影するのをやめましょう」
「みんなが皆、あなたみたいに劣等感を抱えて生きてるわけじゃないです」
「自分の好きなものばかり読むのを辞めましょう」
少しずつ苦しくなっていった。
プライベートでは仕事の苦しみを誤魔化すために、婚活の名目の元、相変わらずマチアプ。
12月に付き合った大手銀行の人事の彼女に3月にフラれて大凹み。
当然、仕事には身が入らない。
去年、帰りに飲みに行ったり、昼も一緒に歓談していた直属の上司は
みるみるうちに急激に冷たくなっていった。
そして5月に付き合った彼女。1歳上、美人、巨乳、経営者、気が強い。
「私が大黒柱になる」「男は専業主婦でも良い」
俺がこんな人いたらいいな、を全て詰め込んだような存在だった。
いいねも向こうから付けてきて、向こうから付き合おうと言ってくれて、
3ヵ月付き合って問題が無ければ結婚しようと言われていた。
入籍は10月1日予定。8月頭にお互いの両親に挨拶に行こうと、
俺の実家への飛行機チケットまで予約されていた。
2か月でフラれた。
記憶に残っているのは、
広く、窓からの見晴らしの良い、フルリフォームされた購入済マンションで
「全部○○の物だよ♡」とたわわな乳を口に含ませてくれたこと。
後背位から見える、揺れるむちとした尻肉。
そして俺のデリカシーの無い言動の数々にヒステリックに泣く姿。
中目黒駅の隠れ家バーでフルーツカクテルと共に熱烈に始まったお付き合いは、
川崎駅の星野珈琲で、味の薄まった氷の溶けたアイスコーヒーの中に消えていった。
そんな絶望の中、編集長に呼ばれた。
直属の上司が、俺のタスク遅れや成長スピードの遅さを
編集長に全て言いつけていたらしい。
編集長目線では、俺は上手くいっていると思っていたらしい。
タスク管理が苦手なのは前から知っていたが、
俺には爆発的なクリエイティブの才能があって、
それを見込んでいた。
もしくは部署異動してタスク遅れも
改善されるかもしれないと。
しかし、俺はそのどちらにもならなかった。
俺のことは人としては好き。
ただ、次の半年間で成長が見られなかったら
その時はもう一度話し合おう、と言われた。
茫然自失のまま、元カノからもらった風邪を拗らせてぜんそくになった。
ぜんそくの診断を受けた帰り道、狭い道を通り抜けようとしたら
路肩に違法駐車されていた自転車が俺のバックの紐にひっかかり、
車道側に倒れ、事故加害者になった。
破れかぶれにマチアプを再開して、ひらやすみ好きな女の子と
ドラマに出てきた有名な阿佐ヶ谷の四文屋で飲んだら
牡蠣に当たって感染性胃腸炎になった。
そして、クレジットカードがなぜか不正使用されて止まった。
ここ数年で間違いなく最悪のところまで来ている。
先週、一度だけ先輩にネームチェックを褒められた時、
元カノの揺れる乳と尻肉の残像が少し薄まったような感覚があった。
今年は一旦マチアプを休止する。
…俺はアホなので、あと二人だけ会う。
仕事をやるしかない