甘い生活

ビューティフル・ヒューマン・ライフ

もう書かないと思ったら書ける 

何事も義務感が生じてくると途端にやる気がなくなる。もういいや、と思ったら案外書こうという気になってくるから不思議だ。


この前買った吉川宏志集が良かった。帯の「反転する青春」という文字につられて買った歌集。

ぱっと読んで良いと思った11首。

1.似ていると思うは恋のはじめかなボート置き場の春の雷

2.美しき人から借りし小説に性の描写は淡いけれども

3.海を背にしていることも強みとし君はやさしい夏を打ち切る

4.飽きることおそれながらも逢いにゆく雪こびりつく有棘鉄線

5.風を浴びきりきり舞いの曼珠沙華 抱きたさはときに逢いたさを越ゆ

6.ずたずたにおまえの体を抜けて来る言葉であれば撃たれてやろう

7.プリズムのように夕陽が透過する電話ボックス駅前に並ぶ

8.熊蝉の声を畳んで輝る森に手を振る、もっと勝てばよかった

9.ゆうやみに曝す心の粘膜を弱さとだけしかあなたは言わぬ

10.女という窓から外を眺めおり夕雲の色オレンジ過ぎる

11.アパートの湯に沈むとき睾丸は浮力をつけて「負けるな」という

吉川宏志、『吉川宏志集』、巴書林、2005年、「第一歌集『青蝉』」から

1は昨日の記事で俺が書いてたような、「フジファブリック!うわあああ!」の瞬間がぎっちりおさまっててニヤニヤしてしまった。

2も「わかる!」って思った。ああやっぱりそういうことも考えてるんだよなあわかってるんだよなあってなるあのカンジ。

3は「海を背にしていることも強みとし」ってのがすごく女の人のことっぽくて、女のいじらしい感じが伝わって来て良かった。

4は「飽きることおそれながらも逢いにゆく」っていうのが凄いさらけ出してるなあと思った。下句で歩いて向かう時の情景が見えてくる。

5はストレートに心うたれた。一番好き。「抱きたさはときに逢いたさを越ゆ」って、胸が熱くなる。

6も「わかる!」ありったけの感情をぶつけて来てほしいから。(主に好きな女に)きっと実際ぶつけられると慌てたり凹んだりするんだけど。

7は単純にパーッと光景が浮かんで来て、それが凄く綺麗だった。

8はなんかそれっぽく書いてる上句から一気に落とす「もっと勝てばよかった」の情けなさが好き。

9は、「弱さ」と言われて「そうだよな」って思う気持ちと、「でもそれだけじゃない」の組み合わさった情けない気持ちが伝わって来て「だよね。。」ってなる。

10は情感に寄ってしまう時の気持ちが伝わって来て良かった。「女として世界を見る時があんだぜ!」って俺たまに思う、てかしょっちゅうかも。。

11は笑っちゃう。好き。

こういうの書きてえ!の連続だった。ただ俺が上で挙げたのはかなりわかりやすい方で、意味わかんねえってなるのも多かった。
つーか誰の読んでもだいたいそう。

短歌は共感と驚嘆がバランスよく噛み合った時に秀作が生まれるって読んだけど、
俺はバカだから言葉の意味が分かんなかったりして「驚嘆」の部分が上手く掴めなかったりして、理解できない歌が沢山あるのがもどかしい。

掴めるようになりたいねえ。