甘い生活

ビューティフル・ヒューマン・ライフ

ぐらっぐらな希望

2017年3月25日は俺の唯一の希望だった

友人Kと池袋西口の噴水の前でFさんを待っていたが、約束の時間に現れなかったので先に店に入った
そうこうしてる間に躁鬱のTさんが来た

Tさんは懐の広い、優しい人だった 
筋肉質で話も上手く仕事もできるのに声が出なくなったり、安定剤を飲んだりしていた、というギャップもチャーミングだった
こんなわけのわからない会にわざわざ遠くから来てくれて嬉しかった

集合時間から一時間半遅れてFさんはやってきた、会社の飲み会が長引いたらしい

俺は少し、いやかなりいじけていた

Kとの打ち合わせ通りに「おせえよ!」と叫んだ、ちょけた感じで

Tさんが「バックれるかと思った」と言った時に「ここ(Tさん)とここ(K)でそれはないよ笑」とFさんが答えた
間髪入れずTさんが「○○くん(俺)は?」と言った時、Fさんが割と結構微妙な顔をしていて何も答えなかったのがすげえリアルで

ああ、なんかもう、むりだなあ

と感じてからは何も話せなくなった

今思えばここで「いやいや俺は!?」とか言っておどけるべきだった

とにかく酒を飲んだ 中ジョッキ三杯で割とギブするくらい酒は弱いが、この日はとにかく飲んだ
酒に酔ったら勢いで饒舌になれるんじゃないかという期待があった

何も話せなかった

酒の勢いに任せて「Fさんくらい素敵な女はいねーッスよ!」というくだらないセリフを言うのを
三月上旬位から何回もイメージトレーニングしていたはずなのに言えなかった

後は二軒目のバーででFさんが作ったちんこの形のおしぼりがすごく上手だったのが印象的だった

Fさんが終電近いということで先に帰って三人になってから急に言葉が出るようになって、のたうちまわった
ペンギンに餌をやったりして、みんなに迷惑をかけて、初対面のTさんに駅まで連れて行ってもらった

キングクリムゾンを聴き内省しながら帰った

その後Fさんと少しラインのやり取りをしたが「またみんなでごはんいきましょう!」で、
「みんなで」っていうのがやっぱり、何回も聞いてきた気の無い男に対する常套句だし、
そりゃなんも話さねえわけわかんねえやつと急に二人なんてなりたくねえだろうし
何より俺自身が二人でどこか言っても何も話せなくて終わるだろうなっていう、そういう気持ちになってしまっている
もうマジで正直何を話せばいいのかが分からない。

というようなことを友人Kにくどくどと話し、「こんなんじゃ二人でとか無理だわ」と最後に言ったら


「いつも自己中心的過ぎ。まず一時間半遅れたからってお前がうじうじしていじけるのは違うでしょ。『わざわざ来てもらってる』という意識でいなきゃ。向こうは会社の先輩達との飲み会だったんだし多少は仕方ないところあるでしょ。それに、Fさんに対して自分のことを知ってもらえるような努力はした?そもそも自分のこと何も知ってもらえてない状態じゃ向こうだって心開けないし何も話せないでしょ?それで二人では無理とか、あたりまえでしょ。無理に決まってるじゃん。」



ぐうの音も出ない正論だった。

そう、Fさんは恐らく何の気もないであろう俺のためにわざわざ来てくれてたのだ。
そんな俺が冗談でも「おせえよ!」なんて言うのは勘違いも甚だしい。
挙句の果てに酔っぱらって何も話せないんじゃ何のためにみんなが集まってくれたかわからない。
俺には「相手に楽しんでもらおう」という意識が足りない。

しかもTさんはFさんが駅に着いた頃に飲み屋までの誘導をlineでしていたらしい。「駅迎えに行こうか?」とか。
そういうの俺全然できてない。うじうじする前にやらなきゃいけないことがたくさんあった。

そして更に今、ぐらぐらに揺れている。

Fさんとの飲みで死んだ次の日の昼、軽い吐き気・絶望・その他と共に起き上がった俺に飛び込んできた一通のline。
大学の部活の結構美人な先輩からの唐突な飲みの誘いだった。

OBOG入り乱れて後輩たちの追いコンに参加した時に久々に再会した一つ年上の先輩だ。

俺は後輩の女の子から酒を飲まされまくって一気しまくってべろんべろんになって、その先輩に「ハグして下さい!」とか言って抱いてもらっていた。正直いやかなり最高だった。「先輩良いにおいする~」とか言って。
「○○くん小動物みたいで可愛い~~」と可愛いを連呼されて満更でもなかったが、大学時代の飲み会のノリ久々に楽しめて良かったな・・・位にしか考えてなかった。

美人からの唐突な誘いということでネットワークビジネスか宗教勧誘を疑ったが、場所を指定してこない辺りネットワークビジネスの線は薄そうだった。


俺は自分より頭の良い女の人が好きだ。尊敬できてちょっと変わったところがある人に魅力を感じる。
Fさんはもうガチガチに頭が良い。頭が良くてかわいくて変だ。
先輩も職業柄間違いなく頭は良い。で美人で足が綺麗で変だ。

飲み会の帰り道、先輩に「自分より稼げない男ってどう思いますか?」と聞いたら「全然気にしない。自分が稼げばいいじゃん。」と言っていた。
もし仮に、先輩が俺に好意を持っているとしたらその点での現時点での不安は無い。
もちろん将来的にはもっと稼げる様になる必要はあるけど。

Fさんを紹介してもらうときにKに「ダメだけど、そのダメな部分を可愛いって思って貰える可能性があるから、奇跡が起きるかもしれない」と言われた。

しかしFさんの前では妙にスカしてしまって可愛くないダメさを出しまくってしまった。

先輩の前では全力でダメを放出して、皮肉にもそれが例の「奇跡」になってしまった可能性がある。
唯一「ダメの可愛らしさ」という点だけが自分の勝てる路線なんじゃないだろうか。しかしこの先こんなことはそうそうないだろう。

自分のタイプの女性に土曜日の夜にサシ飲み誘われて奇跡を期待しない男がいるだろうか?いや、いない(反語)

そして懸念材料が一つ、先輩は彼氏の存在を微妙に匂わせていた、様な気がする。だから本当のところはちょっとよくわからない。
でも期待してしまう。

ちょっと俺は今わけがわからなくなっている。Fさんはとびきり可愛いけど現時点で脈は無い。何を話していいかわからない。
先輩は俺を可愛いと言ってくれている。話しやすい。

最悪のシナリオはFさんとこのまま疎遠になり、期待して会った先輩は本当に彼氏がいて俺をちょっと掌で転がしたいだけだったとか、宗教に誘いたいだけだったとかで結局何も手に入れられないことだ。

五年前の春、大好きだったMちゃんにフラれて傷心中にカラオケで結構可愛い店員に連絡先を渡されて結局何もしないで終わった後悔。
syrup15g.hatenablog.com

この時と少し状況が似ている。この時ほど事態がはっきりしてるわけじゃないけど。
でももう似たような後悔はしたくない。

だからFさんをまた飲みに誘うつもりだし、先輩とはサシで飲む。

どっちもめっちゃ楽しませる意気込みだ。これでどうだ。

そうだ、俺にはまだ希望がある。