甘い生活

ビューティフル・ヒューマン・ライフ

Tinderで出会った女の子をホテルに誘ってみた

Tinderというのは出会い系アプリの一種。プロフィール画像と簡単な自己紹介文を載せて、気になる相手とマッチングすればその人とメッセージのやり取りができる。Tinderを使う利点は二つあって、まずfacebookと連動してるからある程度の信頼性があるということ、二つ目は無料でも使えるということ。
いくつかマッチングした人はいたけど、この間初めてTinderを通じて女の子と会うことになった。
この日に向けて目標を立てていた。「イケメンを演じること」と「ホテルに誘うこと」。自己卑下を繰り返す自分の殻を破るために、これだけは死んでもやり切ること。

6月25日日曜日、18時に新宿駅東口の交番前で待ち合わせた。

やり取りが全てTinderで、LINEの交換すらしていなかったので本当に来るか不安だったけど、彼女は来てくれた。名前はYさん。身長が高くて顔は普通だった。素直な感想として「いい感じにやれそう」だなと思った。ちょっと自分に自信が無さそうな感じを嗅ぎ取り、相手も緊張していると思うとスムーズにイケメンという役柄に入ることができた。車道側は自然と俺が歩くようにして、相手の緊張をほぐす為に軽い冗談と、いくつか質問をしながら飲み屋へ向かった。俺もYさんも同じ東北出身で歳も全く同じ25歳ということでそこそこ盛り上がった。滑り出しはなかなか順調だった。

飲み屋に入ってすぐにカウンター席へ。真正面で向かい合った相手には警戒心を抱きやすくなり、カウンター席の場合は距離も近く仲良くなりやすいという人間心理があるらしい。早い時間に入ったから端っこの一番良い場所を取ることもできて少し安心した。店へは一回行っただけだったが薄暗い雰囲気が良い。

生ビールで乾杯し、学生時代の話や仕事の話をした。相手は食品メーカーの企画開発をしているらしく、もともと理系らしい。「リケジョすげえ!」とか言って褒めた気がする。6月に仕事を辞めて無職の俺だけど、ライターをやっているという嘘を付いた。仕事のやりがいだとかの嘘も意外とスラスラ言えた。で、学生時代の話から恋愛話に持って行った。大学時代はインカレの飲みサーに入っていたということでそれなりにお付き合いがあったらしい。付き合いたいと思う人がインカレサークル所属だったなら少し怖気づくけど、これからセックスをしようという相手としてはポイントが高い。「適当に色んな人と知り合って遊ぼう」という思考タイプだということがわかるから。
そしてもちろん自分の恋愛については嘘を付いた。高校時代に一人、学生時代に三年付き合った彼女が一人ということにした。リアルな感じを狙ったんだけど、盛りが足りなかったと反省している。
2時間半程して二軒目を誘った。「明日仕事で早いから・・・」ここで今日は厳しいということがわかった。最大の反省点は8500円を奢ってしまったこと。引き際を見極めるならここだった。俺は無職で金が無い。やらせてくれない女に奢る義理も余裕も無かったはずなのに。

店を出た。
「この後ホテル行かない?」
「ごめん、明日早いから・・・」
スムーズに言えたし、断られてもダメージは無かった。
「じゃあ手繋いで駅まで帰ろうよ」
これが俺の二度目のミス。もういいだろホテル誘ってるんだし、と思って性欲を止めることが出来なかった。
「うーん^^;ちょっといいかなあ」

でLine交換して駅まで送って帰った。LineはブロックされておりTinderのマッチも解除されていた。ショックは少なかった。単にやることしか考えていない相手に何をされてもほぼどうでも良いということが分かった。

正直8500円という代償はかなりきついけど、それと引き換えに「女性をホテルに誘う」という、恐らく普通の男なら10代後半から20代前半で何度も経験しているだろう行為を初めて体験することができた。これはかなり大きい。誘った後明らかに嫌そうな顔で罵倒されたらきついけど、そこまでやってくる女なんてそうそういないだろうし。身内ならきついけど所詮アプリだから一生会わないだろうし。良い時代になったなあ。

その後友達を誘って高円寺でナンパしまくった。日曜日の夜ということもあってそもそも人が少なくて成功しなかったけど、シカトは0だったし9割位は笑ってたから案外行けるじゃんという気持ちになった。

「この人と付き合いたい」より「こいつとセックスしよう」という気持ちの方が緊張しないし、失敗した時のダメージも少ないってことがわかった。とにかく今回もセックスできていないので、いずれセックスまで持ち込めたときのことを書けるように頑張りたい。

イケメンを演じる

昨日、相変わらずうだうだと一日を終えようとしている深夜1時過ぎに友人から連絡が来た。「駅にナンパしに行かない?」
誘いに乗った。シャワーを浴び、髪をセットして深夜の駅前に繰り出たが水曜日の夜と言うこともあり、めぼしい女性はいなかった。
ターゲットは二人組だったが、今日はあまりにも人が少なすぎるということで友人が馴染みのあるバーへ向かった。

友人はtinderでよく女の子と出会っているのでその話を聞いた。
俺が前に駅前で知り合いと飲んでいるときも、同じ飲み屋にたまたまそいつがいた。その時に一緒に飲んでた可愛い子はやはりtinderで出会った子だった。
俺が見た時は大きそうに見えなかったが、脱がせたらFカップだったらしい。本当に羨ましい。
正直彼女がいるのになんでそんなに女と遊ぶんだと妬む気持が依然からあったけど、大学を卒業して友人と会う機会も減り、彼女は好きだけど一年も経てばマンネリ化する。そんな中で「ネタが拾える」「刺激になる」そういう言い訳だった。創作で生きて行こうとしている人間なのでまあなるほどと思った。村上龍も多分やりまくってるし。俺もライターとかを目指すなら俄然ネタを増やしたいし、ヤるしかないなと思ってtinderのアドバイスを貰った。

でその後そいつがタバコ買いに行ったついでに女の子まで拾ってきた。正直あんまり顔は可愛くなかったが、頼んだらパンツを見せてくれて驚いた。
店を出た後、友人の家が自転車で10分以上かかるということで、歩いていける距離の俺の家で二次会をやることになった。なんという急展開。
途中でLineが来たと思ったら友人から「今日やるぞ」と一言来ていたので「おう」と返事をした。
マンションのロビーで少し待ってもらって部屋を片づけたが、俺の部屋の最大の欠点はカーテンが無いことだった。

二人が入ってきてやはり整理整頓がされていない点とカーテンが無い点を指摘された。「カーテンあったら全然やってた」とさえ言われてしまった。
飲んで色々話したが、女の子はグロ動画が好きだったり、初体験がレイプだったりクラブで40人位の男と寝ていたりカフェを経営したりと色々破天荒だった。の割にまだ21歳なので末恐ろしい。
で、俺がトイレに立ち戻っている間に二人は俺のベッドの上でキスしていた。友人に誘われるがままに俺も女の子の隣に座ったが、させて貰えなかった。
スムーズに事を進めることが出来ない。恥ずかしくて顔を覆ったりしてしまう。「おいおい、てめえはそんな軽い感じにやれるタイプの人間だったか?滑稽じゃねえか?」ともう一人の自分が語りかけてくる。そういった雰囲気が女の子に伝わってしまうのだ。
「見た目もかっこいいし、部屋もちゃんとしたら良い感じだし全然モテると思う。でもたくさん話しちゃうと、なんだろう重いっていうか・・・」いつもの感じだ。ヘラっと恥ずかしさを出してしまうこと。全部口に出して言ってしまうこと。これの二つが女の子を途方も無く萎えさせてしまうのだろう。
なんだかんだいって添い寝まではさせて貰うことができたので一歩前進とする。

女の子が帰り、友人と反省会を行った。
日曜日にtinderで知り合った女の子と飲むので、今回の反省を活かして「イケメンを演じる」という挑戦をすることになった。
その日一日は俺はイケメンとして存在する。ずっとモテなくて、冴えなくて、仕事も上手くいかない俺はこの世に存在しない。
仕事に関してはもうライターをやっていて、軌道に乗っているという設定で行く。なんなら嘘を本当にしてしまえばいい。
あとは自分のことを必要に語らないこと。語るのはブログだけで十分だ。
で、最大の課題は「ホテルに誘う」ということ。友人曰くtinderで出会った女は十中八九やれるらしい。これに関しては以前新宿で飲んだ大学の先輩を誘い損ねた時の反省も活かしたい。誘わない方が失礼だということもあるのだと。失敗してもそれが糧になるはず。
イケメンを演じる。ホテルに誘う。この大きなハードルをクリアして素敵な30歳、リリーフランキーのような肩の力が抜けた中年を目指していく。

おっぱい

後輩♀と茶店で男性についての悩みとか消費されてしまう女性性についての話を本当に真面目に討論した後、
二人で公園に行ってたこ焼きをつまみに缶ビールを飲んだ。
この時点ではおっぱいを揉む気なんて一ミリもなかった。でも缶ビール二缶目を空けるころには素直な気持ちになっていた。

~酔いモード~
そうそう喫茶店で話しているときに「お前色気全然無いよな」とけしかけたら「は?そんなに言うならおっぱい触ってみますか?」つってたよな。
おっぱいが揉みたい。抗えないよだって、隣には20代前半の可愛くておっぱい揉んでも良いよって女の子が座っている。
いつから俺は揉んでいない?最後に揉んだ日を思い出せないぐらいしばらくおっぱいから遠ざかっている。
おっぱいが揉みたかった。どうしても揉みたくなってしまった。

「あのさぁ・・・」
「はい?」
「喫茶店で触ってもいいって言ってたじゃん。あの、本当におっぱい触っていい?」
「もう一缶飲んだらいいですよ」

俺は席を立ってコンビニへ向かった。冷静になるために一人で向かった。道中、にやけ面を抑えることが出来なかった。
だって今日おっぱいを揉む気なんて一ミリも無かったんだ。本当になかった。
いや、それは違う。それは語弊がある。本当は24時間生きてる間中、多分この世に生を受けたその瞬間からずっとおっぱいを求めている。
普段抑えているだけで、その本来ある欲求がアルコールによって解放されただけだ。本当はいつだって求めている。
喫茶店で「揉めるなら揉みたい」と思ったけど社会性と恥じらいがそれを抑えた。あの時だってすぐに触りたかった。でも周りの目とかも気になるし、人の前で堂々とおっぱいに触れられるような羞恥心の無い人間になるのが嫌だった。
で、いま「揉めるかもしれないおっぱい」が「確定したおっぱい」に変わった。場所も人気の無い公園。
にやけ顔を抑えられずにいられるだろうか。
そそくさと缶ビールと缶チューハイハイボールを選択し早足で公園に戻った。
そうしたら焦り過ぎてハイボールだと思って選んだものが緑茶ハイになっていて、酔いとおっぱいでこんなに思考能力は低下してしまうのかと驚いた。

話を聞いた。早くおっぱいが揉みたい。その話はちゃんと聞いているし、ちゃんと相槌も打つけど早くおっぱいが揉みたい。
我慢だ、まだ今は耐える時だ、でも、もうだめだ!揉みたい!おっぱいが早く揉みたい!もうだめだ!ああ!

「ごめん、それで、そろそろおっぱい揉んでもいい?」
「はい」
ワンピースをめくり上げる後輩。馬鹿にしていたけど意外とそこそこのおっぱい。
水色のブラをめくり上げる。
そこには日常の顔をした非日常が二つ実っていた。
画面越しで見ない日は無くましてや街に出れば溢れかえっているおっぱい。近くってとっても遠いおっぱい。
全部そこにあって全部幻。
それがこのどうしようも無い日常に、本当に現れてしまった。

手を伸ばす。触れる。なんて表現すればいいんだろう。柔らかくて、滑らかで、気持ち良くて、他にこんなものって無いよ絶対。
後輩のおっぱいが良いおっぱいだったってこともあって、磁石の様に引っ付いてそこから手が離れられなくなった。
しばらく揉んで、手を放してから匂いを嗅いだら石鹸のほのかな香りがして、ちょっと感動してしまった。
そんな感動も相まって、今度はおっぱいを吸いたくなってしまった。
吸いたい!おっぱいが吸いたい!

「えーと、おっぱい吸っていい?」
「えーこんな所でですか?」
「いいじゃん誰も来てないよ」
「まあはい」

吸った。男はおっぱいを吸う時みんな目を閉じると思う。目を閉じるっていうかつむる。この微妙なニュアンスの違い。
閉じるってのは意識的な行為であって、つむるっていうのは無意識に起こる現象だ。自然ととそうなってしまうのだ。
きっと皆戻ってしまうのだ。赤子の頃に。ここまで来ると「気持ちいい」とかそういう問題じゃなくて「安らか」な、なんていうか暖かい膜で包まれているような心地の良い気分だ。

10秒くらいでおっぱいを吸う行為は静かに止められた。
その後帰り道でもおっぱいを揉ませてもらった。後ろから両手で揉むのが一番良かった。
カラオケに一緒に入って歌いながら沢山揉んだ。少しでもその存在をこの手に確かなものにしたくて何回も何回も揉んだ。揉み過ぎて怒られてしまった。

何回揉んでも、手から砂が零れ落ちる様だった。

そうなりたいって思うことってきっと大事なことだよ

物凄くふわっとした理由でライターをやりたいと思っている。
ライターをやっている自分は好きになれそうだし、文章を書くのは好きだし、書いたものをたまに褒められたりもするから、なら仕事にするのが一番良いんじゃないかという安易な発想だ。
単純作業や肉体労働から営業、頭脳労働まで全て苦手な上興味も持てない俺にとって「これならできるかもしれない」という仕事が今のところライターと囲碁インストラクターだけだ。
囲碁インストラクターで完全に食っていくのも考えているが、やりたいやってみたいと心の底から思うのはライターだ。
ただ、正社員として雇用されることの難しさは求人を見ていてもわかる。ほぼ全てが経験者採用。
未経験採用で、かつ正社員を募集している会社はパッと探しただけだと、以前採用を貰ったスピリチュアル系のブラック企業一社のみだ。

だから迷っていた。ライターだと安定が難しい。
俺は彼女が欲しい。結婚がしたい。だから安定した収入とある程度の社会的地位が必要だと感じていた。
Tinderで職業を聞かれて、無職とは言えないからこの前囲碁のバイトをしたこともあり「囲碁インストラクターです」と返信したらマッチングそのものが消滅していた。ライターのバイトしてます、でも一緒のことだろう。

でも、雇用形態に拘るのはもう良いかな、と思った。
行きつけの飲み屋の店主にやりたいことをやれと言われた。続けているうちに何かあると。
友人に言われた。女のことを第一に考えて生きるのはもう辞めろと。
何か努力している中で、副次的に、運良く得られる、それくらいに考えとけと。
その通りだ、と思った。
幾多のトライ&エラーを重ねたが、学生の時とはもう違う。まずやるべきことを始めなくちゃいけない。
その次に恋愛を置きたい。
今はイルミの針を抜いたキルアの様な気持ちだ。

とにかく文章に関われるバイトでもなんでも始めようと思う。
以前働いていた病院のバイトリーダーから、うちに戻ってこないかという連絡があったが戻るのは辞めた。
楽だけど、それだけだ。

やりたくないことを無理にやることは無理で無駄ということが五か月間で分かった。
行きつけの飲み屋のおばちゃんに、能力が低いせいで周囲の風当たりが強くなりこれまで何度もバイト、仕事を辞めてしまったことをくどくどと話したら、お前がだめなのは能力の低さじゃなくて、それにかまけて一生懸命やろうとしないことだと言われた。いい加減謙虚になれと。刺さった。
「所詮アルバイト」「どうせいつかは辞める」そういう腰掛意識を消すためにも、もうこれしかないと思える仕事をやるしかないと思う。これなら一生懸命になれそうだということを。
やりたいことを一生懸命やっていれば、出会うべき人たちや出会いたい人たちに会えると思う。

「そうなりたいって思うことってきっと大事なことだよ」 『銀のエンゼルよしもとよしとも

高橋と俺

中学はとにかく窮屈だった。
俺のクラス内ヒエラルキーは下から数えた方が早くて、最下層ではないけど中の下ぐらい。
中の中くらいの奴らは全員ソフトテニス部に固まっていて、陸上部の俺はそいつらとつるもうとしても微妙な壁が生まれてしまう。話したことが無い奴が来るともう、だめだった。
同じ陸上部でも、短距離と長距離でなんとなく格差があった。
短距離の奴らは全国大会常連。他校からも一目置かれる奴らで、長距離はせいぜい、市大会で三位レベル。
おまけに変わり者の集まりで、もちろん俺もその内の一人だった。
だから、花形の野球部でレギュラーの高橋がなんで俺と仲良くしようと思ったのかは未だによくわからない。

中学二年の時に高橋と同じクラスになった。
その頃の俺は部活の成績が伸びず、学校の成績も学年平均を大きく割っていてバイオリズムの谷底。
貧乏揺すりが酷すぎて、陰で女子から顰蹙を買っていたくらい。
オナニーにハマって、ニキビが増えて、髪もちりちりになっていって。もう散々だった。
休みの日はずっと囲碁を打っていた。いや打たざるを得なかった。
一緒に遊べる友達がいなかったから。
同じ部活の奴らとは一緒に下校して色々話したりはしたが、休日に誘われることは無かった。
一年生の頃は家まで行って遊んだ短距離の奴らとも、空気的になんとなく離れていった。
入学当初あやふやだった境界線がはっきりしてしまったんだと思う。
一度ソフトテニス部の奴らと遊んだ時があった。他の小学校出身で関わりが無かった奴と上手く打ち解けることが出来なくて、
気まずい思いをしながら野球をした。ボールを拾いに行った時、顔を上げた所にたまたま角があって、そこで瞼を切った。
大出血で病院に運ばれた。それからそいつらに誘われることも一切無くなった。

中二の夏頃にようやく気付いた。他の奴らと比べて自分がかなり遅れていることに。
最初は俺と同じでダンロップとか履いてたのに、皆いつの間にかナイキのエアフォース1やローファーを履いている。
焦ってABCマート限定のVANSのエアフォース1のパチモンみたいなスニーカーを買った。
本当は俺もエアフォース1が欲しかった。

髪型も皆ワックスで立て始めていて、俺も床屋を卒業して美容院に通いだした。
髪を立てるのは「そっち側」の奴の特権だと思って避けた。整髪剤を使うのは家の洗面台の前だけだった。
全く上手くセットできなかった。

一番の問題は服だった。皆、駅前のフォーラスという佐々木希がスカウトされたことでも有名なショッピングモールで服を買い出していた。
中一の頃は大差なかったのに、急に洒落た格好をする奴が目に入るようになった。
俺はと言うと、中学の近くにあるマックハウスにさえ入るのが怖かった。
何を着ればいいかわからない、でも自分がダサくて、それが恥ずかしいことだけははっきり自覚していた。

だから高橋が「一緒に服を買いに行こう」と提案してくれた時は嬉しかった。
服を見立ててくれるのもそうだし、何より休日に遊びに連れ出してくれたのが本当に嬉しかった。

肝心の服選びは上手くいかなかった。高橋の服装はかなりお洒落で、カジュアルでカッコいい系の服装。
高橋は自分の好みで服を見立ててくるので、芋系の俺が着るとどうしても服が浮いてしまう。
結局何も買えなくて目的は果たせなかったけど、それでも楽しかった。

それから高橋と俺は良くつるむようになった。帰りにゲーセンに寄って音ゲーやったり、エロ本屋の18禁コーナーに忍び込んだり。
ちょうど家までの帰り道が一緒の方向で、他の野球部の奴らと気まずい思いをしながら帰ることもあったけど、二人で帰る時は楽しかった。
ガラケーを買って初めてメールアドレスを交換したのも高橋だった。
俺のアドレスは童貞にまつわるもので、「いつか童貞を捨てたらアドレス変えて、最初に報告するからな」と宣言した。
高橋は「絶対しろよ」と笑っていた。

そのまま中3になっても仲は変わらなかった。
スパルタ塾の指導にへばっていた時に、個別指導塾に誘ってきたのも高橋だった。
当時好きだった女の子がいるのもあって、その塾に転入した。
一緒に県で一番の進学校へ進もうと話していた。同じ塾で切磋琢磨しようと。
しかし大学生とダべり、女の子をちらちら横見するという状況で勉強に身が入るわけでもなく、
俺は急激に成績を落としていった。

冬になって、俺も高橋も志望校を二つ下げていた。中の上くらいの高校。入れれば十分嬉しい所だったし、それでいいとも思っていた。
しかし親に猛反対された。もう一つレベルを下げて絶対安全圏の高校を受けろ、滑り止めの私立に行かせる金は無いと。
泣き叫んで拳を血だらけにするまで壁を殴っても親の意思は覆らなかった。
俺はもう一つ、レベルを下げることになった。そこからは完全に無気力になって、高橋にも話さなかった。

入試前の進路指導で、受験校を担任に告げた。
その日からどうも高橋が俺を妙に避けるようになった。
急に嫌われたと思って怖かった。でも自分では理由がわからなかったので、避ける高橋を追いかけて問い詰めた。
高橋はなかなか口を割らなかったがしつこく問い詰めると不機嫌そうに「どうして俺に西高受けること言わなかったんだよ」
と言った。
他の奴から俺が西高を受けることを聞いたらしい。
「本当は俺も志望校を変えたくなくて、でも親に無理やり決められて話す気にもなれなかった」と言うと
「一言相談しろよ、今まで色々仲良くしてきたけど、それくらいの信用も無いのかよ」と言った。
結局、納得はしてくれたものの微妙に気まずくなったまま入試期間に入り高橋は志望校に合格、俺は西高に受かって
会ったり連絡をすることも無くなった。

次の再開は成人式の時だった。
俺は一年浪人して大学一年生になっていた。成人式ということもあって長期間の帰省だった。
そこで中学の時の少人数での集まりに誘われて、その中に高橋もいた。

それなりに話した気はする。高橋は札幌の大学に進学していて、卒業後は地元に戻ると話していた。
俺は昔と比べて成長した姿を見せられると思った。もうマックハウスは怖くないし、フォーラスなんて
原宿で服を買った俺からすれば屁でもないぜ、なんて考えていた。その割には今でも垢抜けていないけど。
高橋は俺の服装や靴をじろじろと眺めていた。「ふーん」という感じの顔で。
服、良くなったなと褒められるかなと思ったけれど、何も言ってこなくて、むしろその見定めてくるような視線がなんとなく嫌だな、と思った。
高橋はいわゆる「地元最高だぜ」って感じの方で、バーベキューとかが好きなタイプ。
一方の俺は「東京おもしれええ!地元はクソ。文化的趣味最高!」って感じが今よりも更に強かったから、
話はもう全く噛み合わなくなっていたし、もうあの頃みたいに気さくに笑いあえる感じではなかった。
向こうからこっちに積極的に話を振ってくることも無かった。

最後に関わったのが二年前くらい。
メールじゃなくてlineが突然来た。
「お前の妹と俺の弟が付き合い始めたらしいぞ!」
マジだった。これは笑った。
「マジかよ。笑 てか俺、前童貞卒業したら初めにお前に言うって言ってたじゃん」
「そういえばそうだったな」
「俺まだ童貞なんだよなあ!」
「は?ウケるんだけど笑 頑張れよ笑」
「それな」
「てかまあ、そんだけ!」
「おう!じゃあなー」
「うい!」

これが最後のやり取り。

結局、ようやく去年童貞を卒業したけど、それを報告しようとは思わなかったし、
童貞に由来するアドレスも変更はしなかった。

フェイスブックで友達になっているからたまに近況を見かける。
高橋は大学を卒業して地元で警察官になっていた。
去年結婚して、子供もできたらしい。
生まれた子供の写真に、いいねだけ付けておいた。

会社、実質クビになりました

先週の木曜日のこと。

友人と飲みの約束をし意気揚々と新宿へ向かった。
大学の同期、後輩と三人で安い居酒屋へ。
いつもの様に会社の愚痴等を重ね、友人とは別れ後輩と三人で阿佐ヶ谷へ。
阿佐ヶ谷で別の友人を呼び、飲んだ。
後輩とも別れ、明日の心配の無い友人と二人きりで二軒目、三軒目へ。
時刻はもう午前2時。いつもならオナニーし終えてベッドに入る頃。流石に帰ろうと思ったが、
ガールズバー行こうぜ」の甘い囁きが。
普通に考えたら次の日のことも考えて帰るところだったが、呼び込みの女の子が可愛すぎる。
入店。

木曜日ということもあり店内には俺と友人しか居らず、貸切状態。
調子に乗った友人が俺の金で店員に奢るなどして、飲酒を重ねた。
可愛い女の子の実家が俺の実家と徒歩10分圏内という奇跡等があり非常に盛り上がった。
lineを聞き承諾されるも、携帯の充電が切れているアクシデントが発生。
代わって友人がlineを交換し、彼女のlineが確実に俺に行き渡らないであろうことを確信。落胆。

3時頃に退店。

酩酊状態のまま帰宅し、寝たのは3時40分位。

次の瞬間。

携帯のバイブで目を覚ますと「9時42分」
始業時間は9時30分。
携帯のバイブは会社からの電話だった。3回程着信履歴が。とりあえず出るのをためらう。

一旦冷静になるためにシャワーを浴びた。

浴び終え、身体を拭きながら俺の中に二つの選択肢が浮かび上がった。

①通勤途中で携帯を落とし、連絡できなかったがたった今見つかったと連絡し、そのまま会社へ向かう
②先週抜いた親不知の部分が化膿し、激しい痛みの為病院へ行っていた、途中で電池が切れて連絡が出来なかった

ドライヤーを手に取って鏡を見ると、ふやけた赤ら顔が写っていた。どうやら息も酒臭い。
よって②を選択した。

部長に連絡をしたが出ない。震える声で留守電を入れる。俺は嘘をつくのはあまり得意ではない。
しかし正直に寝坊だと話して出社し周囲から白い目の中、明らかな二日酔い状態で働けるほどのメンタリティも持ち合わせていなかった。
その後会社にも連絡をし、休むことに。

昼過ぎまでベッドに横たわりyoutube等を見ていたが、一応もう一度部長に電話をかける。出ない。
その30分後に部長から折り返しが。

「どうして始業前に連絡しなかった?今回の君の行動は社会人として常識に欠けるものだ。月曜日、面談な。」

当然だと思ったがかなり気が重くなった。一方、もうどうなってもいいやという気持ちもあった。

次の日は普通に出社した。先輩に色々言われた気がするがどうでも良いと思っていたので本当に覚えていない。

次の週の月曜日。
いつものクソ程下らない単純作業をしている中、部長が社内へ。
面談室に呼ばれたので少しドキドキしながら入る。

正直ここでもあまり会話内容を覚えていない。
相当叱責されると思いきやかなり柔和な雰囲気だったのは覚えている。

一応解雇は将来に響く形になってしまうので、同意の上での退職にしよう、と同意書を渡された。
「まあ、こうなるよな」という冷めた感情しか湧かなかった。
速やかにサインをし判子を押した。

その後部長から昼食に誘われ、ココイチでカレーを食べ、五反田唯一の心残りだった喫茶店へ。
部長は俺から社内の状況を聞きたかったのだと思う。

俺は言いたいことを話した。相談する、話をする相手がいない社内でひたすら単純作業をするのが苦痛だったこと。
一応6月から外回りということだったが、そもそも営業をやること自体に自分の適性を見いだせなかったこと。
悪口ばかり言う事務の近くに居ることにストレスを感じていたこと。

事務がうるさい、というのはどうやら部長も感づいていたらしい。かなり見くびっていたが、
彼も彼なりに上手く立ち回ろうとしていただろう。

最後に俺に仕事を教えていた先輩のことを話した。
余りにも一人で業務を抱え込み過ぎではないのか、もう少し負担を減らした方がいいのでは、と。
話が右から左のポンコツザル脳の上に、モチベーションゼロ状態の俺に根気強く教えてくれた先輩へのせめてもの償いのつもりだった。

部長は、それは確かに考えているところだと言った。
どうやら前々から事務に仕事を振れ、とは話していたらしい。しかし先輩は一人でやろうとすると。
それは先輩の気が弱いからなのでは、と言うとどうやらそれだけではないらしい。
先輩は仕事を他の人間に取られるのが怖いのではないか、と。

考えてみれば思い当たる節はあった。
「〇〇さん、そういう状態が今後続くようでしたら部長から仕事貰えなくなってしまいますよ」彼はいつもこういう言い方をした。
俺は「気持ち悪い」と、「貰えなくていいわバーカ」としか考えていなかった。

残業代も出ないのに毎日一人だけ22時まで残っていて辞めたくならない理由がわからないし、
どうしてあれだけの業務量を抱えて「多すぎて困っちゃいますよ~」と気味の悪いニヤケ面で俺に言ってくるんだろう、
反応に困る上に心が萎えるから本当に辞めて下さいと思っていたが、単にワーカホリックだけだったのかもしれない。

少なくとも部長が多い時で日に20回位クソくだらない用件で電話することに対しては本当にほとほと困り果てている状態だったが。
それについてはめんどくさいな、と思って言わなかった。

何を言いたいかと言うと、キモくて無能で不倫をしているただのクソ眼鏡おじさんだと思っていた部長も結構社内の人間を見ようとしていたんだな、ということと、その割には何一つ具体的な改善策を提示しないんだなということ。

喫茶店から社内に戻り、また雑務をした。
事務も先輩も俺が辞めることを知らされていたが、特に何も変わらなかった。
退勤の一時間前に先輩を別室に呼んで謝った。

僕が教えたExcelの技術を他のところで活かしてくれれば言うことは何もないですと言っていた。
尊敬はできないけど、本当にいい人だった。

その後総務の人と事務処理手続きについて話すために電話した。
一通り話した後、総務の人が「あのね、気を悪くしないでほしいんだけど、話を聞いてほしいの」と言ってきた。

ざっくり言うと、俺が発達障害の娘と重なって他人事とは思えないという内容だった。
確かに研修中ウィークリーマンションの鍵を無くしたりネクタイを忘れたり、朝に弱かったりと
そう思われるようなことが沢山あった。
元夫も発達障害で、うつ病になって失踪したらしい。多分この話、社内で俺にしかしてないんだろうなと思った。
最後の最後に本当に心配してもらってちょっとハートフルな気分になった。

その後軽くシュレッダーをかけるだけで俺の机は綺麗になり、いつもの様に帰った。
行きつけの飲み屋へ行き酒を煽った。
知らない常連が陣取っていて話す流れにもならなかったのでひたすら一人で飲んだ。
そのままぐらっぐらになった頭んままで外に出て走った。
気持ち良かった。

セックスをするやつ、できないやつ

セックスをするやつはたくさんセックスをする

たくさんセックスをする、いろんなひとといろんなセックスをする

たくさんセックスをするやつは気持ち悪くない

たくさんセックスをするやつは嘘をつくのが上手

たくさんセックスをするやつは彼女も作れる

たくさんセックスをするやつは彼女がいてもセックスしようと思う

たくさんセックスをするやつが彼女がいても他の女とセックスをしてそれが悪いと思わない

たくさんセックスをするやつは話が上手

たくさんセックスをするやつはいろんな話ができる

たくさんセックスをするやつは今この瞬間を生きている

まったくセックスできないやつはだれともセックスできない

まったくセックスできない、どうやってもセックスができない

まったくセックスできないやつは気持ち悪い

まったくセックスできないやつは嘘をつくのが下手

まったくセックスできないやつは彼女が作れない

まったくセックスできないやつは彼女がいたら浮気なんてしないと思う

まったくセックスできないやつは彼女がいたら他の女とセックスするなんてありえないと思う

まったくセックスできないやつは話が下手

まったくセックスできないやつはおなじ話しかできない

まったくセックスできないやつは今をやり過ごしている